アルゼンチンアリ

< アルゼンチンアリとは >

アルゼンチンアリは、ハチ目アリ科カタアリ亜科アルゼンチンアリ属のアリの総称です。

名前から推測されるとおりアルゼンチン原産のアリで、本来は日本に存在しなかった外来種のアリ。
南アメリカから生息地を広げて現在では日本、北アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリア、
アフリカなど世界各地でその存在が確認されています。
これらは輸入木材などにくっついていた個体が海を渡り、新たな土地で繁殖に成功して住み着いたと考えられています。

日本では1993年に始めて広島県の廿日市市で存在が確認されました。
その後は船の出入りが多い港町を中心に、愛知県、神奈川県など発見が相次ぎ、
現在では東京都、大阪府、京都府などの都心部でも繁殖が確認されています。

アルゼンチンアリ アルゼンチンアリ


< アルゼンチンアリの身体的特徴 >
アルゼンチンアリは、大きさが大体2mm〜3mm前後です。
胴体は細長く、特に腰周りが細いのでくびれのようなものが確認できます。
体色は茶色っぽく、ツヤや赤みはほとんどありません。

それなりに見た目に特徴はあるのですが、いかんせんサイズが小さいため他のアリとの区別は難しいです。
「アルゼンチンアリが出た!」と報告があっても、実はオオズアリ、トビイロシワアリなどの
他の種のアリと間違っていることも多いのだとか。

アルゼンチンアリ オオズアリ トビイロシワアリ
↑左からアルゼンチンアリ、オオズアリ、トビイロシワアリ
 オオズアリは頭が大きい兵隊アリが混じっているし、トビイロシワアリはアルゼンチンアリよりも黒っぽい



一番判断材料になるのは、その動きの早さです。
他の在来種のアリに比べて格段に移動速度が早いです。
異常に動きが早いアリの群れを見たときはアルゼンチンアリを疑ったほうが良いかもしれません。


↑アルゼンチンアリの動き。とんでもなく歩くスピードが早いのが見てとれる。


< アルゼンチンアリの女王と繁殖 >
アリというと土の中に巣を作るイメージがありますが、
アルゼンチンアリが地中に巣を作ることは稀で、ほとんどは地形からくる何かしらの隙間に巣を張ります。
自然界であれば大きな石の下や、倒木の下など。
人間の生活圏では、コンクリート壁に出来たヒビの間や、プランターの下、土の上に敷いたマットの下、
中には車のトランクや、キッチンの流しの下などに巣を作るようなケースもあります。

アルゼンチンアリは多女王性なので、一つの巣の中に複数の女王アリが存在します。
その数はかなり多く、ひとつのコロニーに1000匹を越える女王アリが確認されたことも。
女王アリは暖かい時期であれば1日60個ペースで卵を産むので、その繁殖能力は凄まじいものがあります。

アルゼンチンアリの女王
↑アルゼンチンアリの女王(全長3mm〜7mm程度)

ある程度アリの数が増えると、女王アリは新天地を求めて分巣していきます。
巣の中で雄アリと交尾を済ませた女王アリは、多数の働きアリを連れて徒歩で移動します。
他の種のアリのように女王単独での結婚飛行などは行いません。
多くの働きアリを伴って行動することで様々なリスクから女王を守ることになるため、
非常に安全性の高い分巣方法だと言えるでしょう。

元の巣を出たアリたちは比較的近い場所に新たな巣を作り、さらにそれをどんどん広げていくために
最終的には尋常ではない大きさの巨大なコロニーが形成されていくことになります。
ヨーロッパでは全長900kmにも及ぶスーパーコロニーが発見された報告も。
日本でも最初に発見された広島県では、相当な大きさのコロニーが形成されていると考えられています。

あ、ちなみにアルゼンチンアリは分巣だけでなく、引越しも頻繁に行います。
これは洪水が多く発生する原産地で得た習性で、少しでも水害の危険を感じたときに行われるようです。
もともとの地形を利用して巣にする習性も、もしかしたら引越し頻度の高さを考えてのものかもしれません。

アルゼンチンアリ アルゼンチンアリ


< アルゼンチンアリの食事と天敵 >
アルゼンチンアリは攻撃性が非常に強いアリです。
多種のアリの巣を見つければ、成虫・幼虫ともに全て自分達のエサにしてしまいます。
そのためアルゼンチンアリが住む地域では、多種のアリは全て絶滅してしまうことになります。

ほかには昆虫(生死問わず)、果実、花の蜜、アブラムシやカイガラムシの甘露、などが好物。
鳥の巣に侵入して生きている雛鳥を襲ったような例も。
人間が食べ残した食事も、肉・魚・野菜・穀物・お菓子など何でも好みます。
特に、砂糖のような糖類を多く含む甘い食べ物に積極的にたかる傾向があるようです。

逆に、アルゼンチンアリの天敵は存在しません。
外来種が天敵のいない新天地で繁殖してしまうパターンはよくあるのですが、
なんとアルゼンチンアリは原産地でさえ天敵と呼べるほどの敵は存在しません。
アリを主食にする鳥やトカゲも、あまりこのアリを好んで狙うことはないようです。

アルゼンチンアリ アルゼンチンアリ
↑クッキーやグレープフルーツに群がるアルゼンチンアリ

< アルゼンチンアリは同種で争わない >
一般的なアリは、同じ種であっても巣が違えば敵グループとして争います。
しかし困ったことにアルゼンチンアリは違う巣のアリ同士が争うことがないことが報告されています。
同種同士での余計な争いがないことが、彼らの爆発的な繁殖力に拍車をかけているのです。
アメリカで捕獲したアルゼンチンアリと日本で捕獲したアルゼンチンアリを鉢合わせてもケンカしないというから驚きです。


< アルゼンチンアリと人間との関係 >
アルゼンチンアリは気性が荒いために、人間を咬むこともしばしば。
しかしアリ自体のサイズが大したことはないため痛みはそれほどではありません。
ヒアリなどのようにその牙に毒を持っていることもありません。

しかし、隙間を好んで家屋に侵入してくるその性質と、異常に高い繁殖能力は、
不快害虫としてはかなり高いレベルであると言っても良いでしょう。

土の中を巣として生きるほかのアリであれば、食べ物を探す目的で家屋に侵入してきますが、
なんせアルゼンチンアリは、巣を作る目的で家屋に侵入してきます。
1mm程度の隙間にも侵入できるこのアリが家屋内で繁殖に成功すると非常に厄介です。

アルゼンチンアリの特集番組で被害者にインタビューをしていましたが、
 ・数が多過ぎて、駆除しても駆除しても全く数が減らない
 ・風呂掃除をしていて壁の隙間に水が入った瞬間、周りが真っ黒になるほどの数のアリが出てきた
 ・ゴミを置くとすぐにどこからか無数に現れてくる
 ・どうしようもない、ノイローゼになりそう
など悩ましい声が多数上がっていました。

また、農業害虫としても悪名が年々高くなってきています。
果物や大根や人参などの根菜をかじって商品価値を無くしてしまう報告が上がっています。
さらに別の農業害虫であるアブラムシやカイガラムシを守る性質があるため、
これらの昆虫の大量発生を招いて作物に大きな被害をもたらす危険性も。
養蜂所のミツバチの巣箱や蜜を食べてしまう食害も報告されています。

さらに前述したとおり、他のアリを駆逐してしまう点も大きな問題です。
海外では他種のアリを主食にしていたトカゲの数が激減してしまった例もあります。

アルゼンチンアリ アルゼンチンアリ
↑アルゼンチンアリが他種のアリを攻撃している(左)、アブラムシから甘露をもらうアルゼンチンアリ(右)


< アルゼンチンアリの駆除方法 >
残念ながらアルゼンチンアリを完全に駆除するための有効な方法はいまだ見つかっていません。
1mmの隙間があれば侵入可能、数が膨大、非常に強い繁殖力、
これを完全に防ぐのは不可能かもしれません。

しかし、侵入されにくい・繁殖されにくい環境を作ることは可能です。
ここではアルゼンチンアリの被害を多少なりとも軽減する方法を紹介していきます。

@家の周りから彼らの巣になりそうなものを除去する
まずは自宅周辺の掃除・不要物の処分をしましょう。
アルゼンチンアリが巣にするような物を全てなくすことで、アルゼンチンアリの繁殖を防ぐことができます。

 ・ダンボール、木箱、タイヤ、木材、マット、ブルーシート、コンクリートブロックなどを長期間放置しない
 ・立てかけられるものは立てかけて、地面との設置面積を減らす
 ・鉢植えはプランタースタンドなどの上に乗せるようにする
 ・コンクリートのヒビ等の隙間は全てシーリング材などで埋める

ブルーシート 放置タイヤ プランタースタンド
↑地面に直接敷かれたブルーシート(左)や放置タイヤ(中)は巣になりやすい。プランターはスタンド(右)を活用したい

Aアブラムシ・カイガラムシを駆除する
これらの虫とアルゼンチンアリは強い共生関係にあります。
不要な草むらは伐採、畑や花壇には専用の農薬をまいて殲滅しましょう。
アルゼンチンアリの重要な食事源を断てば、必然的に繁殖速度は遅くなります。

アブラムシ カイガラムシ

B屋内への侵入経路を全て塞ぐ
住宅の外壁にあるヒビや隙間はすべてシーリング材などで埋めましょう。
窓のさんの隙間、軒下の通風孔などの穴は、周辺に忌避薬を散布して対処します。
アルゼンチンアリはあまり高い壁を登って侵入する例はないので、
配慮するのは2m程度の高さまでで構いません。

侵入経路

C食べ物を放置しない
食べ残しは冷蔵庫にしまうか、きちんと蓋をして密閉しましょう。
砂糖などの調味料も密封状態に気を配ってください。
また、気をつけたいのはゴミ置き場。
ゴミを出す曜日を守り、ゴミが長期間放置されるような状況を作らないようにすることが大切です。
缶ゴミ・ビンゴミは必ず水で一度洗浄してから出すようにしましょう。

Dアリを殺すときは殺虫剤で
アルゼンチンアリは群れで行動しますし、体格が小さい上に、走る速度はものすごく速いです。
物理的に手で捕まえたり、1匹ずつ叩いて駆除するのは現実的ではありません。
市販のアリ用のスプレー型殺虫剤を、アリの行列に直接吹きかけるのが効果的です。

E巣を見つけたら積極的に駆除する
自宅近所でアルゼンチンアリの巣を発見したら、積極的に駆除しましょう。
たとえまだ実害が発生していない段階だったとしても、
天敵のいないアルゼンチンアリはコロニーを広げて、少しずつあなたの家ににじみよってきます。
早めに対処すれば近隣全体を被害を未然に防ぐことにつながります。

巣に対して高い効果が望める殺虫剤は、液体タイプとベイトタイプ(毒餌型)です。
それぞれ特徴があるので、できれば併用して確実な殲滅を目指していきましょう。

液体タイプ:
 フマキラーなどから「アルゼンチンアリ用退治液剤」として販売されています。
 液体タイプはアルゼンチンアリの行列に直接かけたり、巣の入り口に注ぎ込むように使用します。
 それによって、巣を出入りする働きアリの体に殺虫成分が付着します。
 アルゼンチンアリはお互いの体を舐めあう習性があるので、巣の中の仲間を一緒に殺すことができるというわけです。
 性質上、働きアリの数を減らす目的に有効で、効果が現れるまでに2、3日と、それなりに即効性も期待できます。

ベイトタイプ:
 ベイトタイプは、巣の近くに設置しておけば働きアリがそれを持って帰って女王や幼虫の餌にするため、
 コロニーの根本的な殲滅が期待できます。
 ただし働きアリの口に毒が入ることは少ないので、うまく巣の中で女王や幼虫を殺せたとしても、
 その効果が実感できるまでに時間がかかります。


< アルゼンチンアリの被害を広めないために >
現在アルゼンチンアリは、山口県から東京都までの太平洋側の広範囲に生息域を広めています。
この拡大を防ぐには個人レベルではなく、地域レベルでの協力と対策が必要不可欠になってくるでしょう。
巣を見つけたらすぐに処理する、近隣の住民同士で情報を共有し合う、
アリの巣になっている資材を他の地域に持ち出さないなど、
その地域全体で住民・企業・自治体が協力してこのアリに対処していくことが重要です。

最近問題になっているのは、沖縄県の辺野古基地の埋め立てです。
埋め立て用の土はアルゼンチンアリが繁殖している瀬戸内地域の土砂を使う予定になっており、
土砂を持ち込む業者はアリの混入を防ぐための具体的な対策を立てていない状況です。
もし沖縄のような狭い離島にアルゼンチンアリが侵入すれば、在来種への影響は甚大でしょう。
国や基地建設に関わる業者にもう少しアルゼンチンアリの脅威を理解してほしいところです。

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< 近年のアルゼンチンアリに関するニュース >
→2016年のアルゼンチンアリのニュース
→2015年のアルゼンチンアリのニュース
→2014年のアルゼンチンアリのニュース
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